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精製度の高い「鉱物油」が「合成油」と表現されるようになったキッカケ

皆さんこんにちは!Kendallラボ担当・ケン太です。

記念すべき(?)第1回目のKendallラボが掲載されたのは、2021年3月29日のこと。

今回で31回目の更新となりますが、お陰様で少しずつ読者の方が増えつつあります。

これまでを振り返ると、ご好評いただいた記事もあれば、「イマイチ」だった記事もあり勉強になっています。


5回目のKendallラボ(2021年4月26日公開)のテーマは「合成油と化学合成油の違いと誤解を招く要因とは?」でしたが、これがナカナカの反響でした。

そこで今回は、その続編にあたる「精製度の高い『鉱物油』が『合成油』と表現されるようになったキッカケ」です。

世界の潤滑油業界に大きな衝撃を与え、今なお消費者を混乱に陥れている、巨大オイルメーカー同士の“場外乱闘”についてご紹介します。




混乱を引き起こす論争は、20年以上前のアメリカ市場で始まった

事件が起こったのは、今から20年以上も前のアメリカ市場。

イギリス系の某有名オイルメーカーA社が、精製度の高い鉱油系ベースオイル(現在のAPI GROUP-IIIクラス)で設計したエンジンオイルを「シンセティック(合成油)」と称して販売開始したのが発端です。


A社のそのような動きに対し、真っ向から意義を唱えたのがアメリカ系石油メジャーB社でした。

当時、B社は本来の化学合成油である「PAO(ポリαオレフィン)」を主原料としてエンジンオイルを製造していました。


そんなB社からすれば、そもそも成分の異なる「石油系炭化水素(鉱物油)」で設計され、価格帯も大きく異なるエンジンオイルを「シンセティック(合成油)」として宣伝・販売し始めたA社の戦略を、黙って見過ごすワケにはいきません。


この「シンセティック(合成油)」という宣伝文句にかかる論争は、日本における「日本広告審査機構(JARO)」に相当するようなアメリカの第三機関で審議が重ねられました。

最終的な結果として、この2社間の論争はA社の主張が通った形で終結したようです。


そして、この論争は「精製度の高い石油系炭化水素(鉱物油)を、事実上『シンセティック(合成油)』と表現しても構わない」という業界の流れを作るキッカケとなったのです。

ちなみに、私たちの先輩はこの論争以前、この種の鉱油系ベースオイルを「疑似PAO(ギジパオ)」と呼び、本来の「PAO(ポリαオレフィン)」とは区別して扱っていたそうです。


「本当に合成油?」と気になるときは、こんな質問をしてみよう

辞書を見る限り「合成」とは、「2つあるいは2つ以上の元素の化合により新物質をつくること、または、比較的簡単な化合物から化学反応により,より複雑な化合物をつくること」といったことが書かれています。


その当時、多方面の専門家が集まり、十分に議論を尽くして導き出された結果でしょうから、今さらこの議論が蒸し返されることはないと思います。

しかし、性能的にほぼ「PAO(ポリαオレフィン)」に匹敵するとはいえ、やはり「成分が異なる」のです。


ですから「合成油」ではない何か別の、誰もが納得する「第三の表現」にできなかったのでしょうか?

あくまでも個人的な見解ですが、「石油系炭化水素(鉱物油)」で作られたエンジンオイルを「シンセティック(合成油)」と表現することに違和感を覚えます。


今日では、この論争の結果が世界へ広がり「API GROUP-III=Synthetic(合成油)」とする暗黙の国際ルールができあがっています。

そのため、ケンドルでもこの国際ルールに合わせる形で各製品の表記が行われています。

そして、当時の当事者であるB社の製品も現在はこのルールに基づいているようです。


最後に、5回目のKendallラボでもお伝えしましたが、大切なことなので繰り返しますね。


あなたが購入を検討しているエンジンオイルのパッケージに、「100%化学合成油」という表記があるとします。

そのエンジンオイルには本当に「PAO(ポリαオレフィン)」や「エステル」等が使われているのでしょうか?


もしもそれが気になった場合は、そのエンジンオイルを製造しているオイルメーカーに、直接問い合わせてみるのが一番です。

ただしその場合、「このエンジンオイルは、鉱物油ですか?それとも、化学合成油ですか?」という聞き方をしないよう注意しましょう。


「このエンジンオイルのベースオイルは、石油系炭化水素ですか?それとも、合成系炭化水素ですか?」

これが正しい質問の仕方です。

エンジンオイルにトコトンこだわりたいなら、覚えておいて損はないでしょう。