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執筆者の写真Kendall Lab

「合成油」と「化学合成油」の違いと誤解を招く要因とは?

Kendall ラボ担当のケン太です。前回の Kendall ラボのテーマは「オイルの善し悪しを左右する『ベースオイル』って何?」でした。その中で、合成油とは「より純度の高い鉱物油のこと」「合成油と化学合成油はまったくの別物」というお話をしました。

今回の Kendallラボでは、その辺りについてもう少し詳しくお話ししていきます。




もう一度いいます。「合成油」と「化学合成油」は別物です!


「合成油と化学合成油は、呼び方が違うだけでどちらも同じもの」という認識をお持ちの方もいらっしゃると思います。しかし、オイルメーカーをはじめとする“業界”での合成油の定義は、「純度の高い鉱物油」を表す場合がほとんどです。

いったい何故、そのようなことになるのでしょうか?


原油を精製する際に高度な処理を行い、硫黄分などの不純物を可能な限り取り除いた高品質なベースオイルのことを、業界のルールとして「合成油」と表現・表示できるからです。

また、日本では「全合成油」「100%合成油」と表現・表示される場合もあります。いずれにしても、それらの成分は「石油系炭化水素」です。


一方の「化学合成油」とは、「高温に耐える」「摩擦抵抗を減らす」といった目的に合わせて分子構造を変化させるなどして、人工的に作り出されたベースオイルのことをいいます。文字通り「化学的に合成された油」です。


その代表格が「PAO(ポリαオレフィン)」ですが、成分は「合成系炭化水素」です。つまり、合成油と化学合成油では、成分そのものが異なるのです。PAO のほか、「エステル」もベースオイルとして利用されることがありますが、いずれも石油系炭化水素に比べて非常に高価です。



「あいまいな表現・表示」が誤解を招く要因のひとつ


これまでお話ししてきた通り、エンジンオイルのベースオイルには鉱物油、合成油、化学合成油といった種類があります。そして、それらはアメリカ石油協会(API:AmericanPetroleum Institute)という団体によって、グループⅠからグループⅤまでの 5 つのグループに分類されています。



上の表がアメリカ石油協会によるグループ分けになりますが、まず「鉱物油」はグループ I・Ⅱを主原料としたもので、「部分合成油」はグループⅡとⅢの混合(ミックス)を主原料としたもの、「合成油」はグループⅢを主原料としたものとなります。そして「化学合成油」はグループⅣ以上のものとなります。


成分が石油系炭化水素であっても、その性能が「化学合成油」と遜色ないレベルに達しているものについては「合成油」等の表現・表示ができる……そのことが、ベースオイルの品質・性能についての誤解を生むひとつの要因になっているのだと思います。エンジンオイルを日常的に取り扱うプロにとっても「ややこしい」ことですから、一般の方が誤解してしまうのも無理はないですね。


長持ちエンジンオイルのケンドルエンジンオイルは、その品質・性能がどれほど高く、自信があるものであっても、天然由来のものを「化学合成」と表現することはありません。化学合成油の「PAO(ポリαオレフィン)」を含んでいる一部の製品(GT-1Ⓡユーロプラスエンジンオイルなど)についても、敢えて「PAO 配合」と表記し、区別しています。



「これは合成油?化学合成油?」と気になったら…


最後に、もしあなたが購入を検討しているエンジンオイルのパッケージに「100%化学合成油」と表記があり、本当に PAO やエステル等が使われているかどうかを確認したい場合は、直接オイルメーカーへ問い合わせてみるのが一番です。その場合、「鉱物油ですか?それとも化学合成油ですか?」という聞き方ではなく「石油系炭化水素ですか?それとも合成系炭化水素ですか」と聞いてみるのがポイントです。


 

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