いまやACEA規格「Cカテゴリーオイル=DPF付ディーゼル専用」ではなくなった!?
- Kendall Lab
- 6月27日
- 読了時間: 5分
更新日:6月27日
皆さんこんにちは!「ケンドルラボ」担当・ケン太です。 「燃費が良い」「燃料代が安い」「パワーがある」などのメリットがあるディーゼル車。 そんなディーゼル車に力を入れている日本車メーカーといえば、マツダと三菱ですね。 燃料別の販売台数データ(2024年度)を確認したところ、マツダ車の約3割、三菱車の約半数がディーゼル車でした(何より驚いたのは、三菱のガソリン車比率はわずか9.2%だったこと)。 クルマ好きとしては「EV一択」になるより選択肢が多いほうが嬉しいので、両社に注目してみたいと思います。
さて、今回のケンドルラボは、以前お届けした「EUクリーンディーゼル乗用車にはACEA規格Cカテゴリーのエンジンオイルを!」の内容をアップデートしたいと思います。 内容を簡単にお伝えしますと「最近のEUガソリン乗用車にもACEA規格Cカテゴリーのエンジンオイルが指定されるようになってきた」というお話です。

ACEA規格「Cカテゴリーオイル」に関する覚えておきたい大切なポイント
本題に入る前に、そもそもACEA規格Cカテゴリーのエンジンオイルは、「DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)」などの排出ガス後処理装置を搭載したディーゼルエンジン向けのエンジンオイルと定義されていました。 そして、ACEA規格Cカテゴリーの中には、C3、C2、C5、C6などの分類がありますが、添加剤量だけに注目した場合、CカテゴリーオイルがDPFを目詰まりさせる確率はC3であろうが、C2、C5、C6であろうが、どれも同じで違いはありません。 専門的ないい方をするならば、これらのC系エンジンオイルの添加剤量はすべて「Middle-SAPS(ミドルサップス)」に属しています。
「SAPS(サップス)」とは、「Sulfur(硫黄分)」「Ash(灰分)」「リン分(Phosphorous)」の頭文字をとったもので、エンジンを保護する添加剤であると同時に、含有量が多いと逆にDPFを詰まらせる原因にもなり得る添加剤の総称です。 そして、これらの含有量が中程度許容されているものを「Middle-SAPS(ミドルサップス)」と呼びます。
ACEA規格Cカテゴリーオイルがガソリン乗用車にも指定される理由は?
もともと「ディーゼル向け」のエンジンオイルだったACEA規格Cカテゴリーのエンジンオイルが、ガソリン車にも指定されるようになったのはナゼでしょうか? それは、ヨーロッパ地域では排ガス規制(EURO 6以降)がさらに強化され、ガソリン乗用車にも「GPF(ガソリン微粒子フィルター)」といった排ガス後処理装置を備える必要が出てきたためです。 DPFのガソリン乗用車版と考えると分かりやすいですね。
そのほか、ダウンサイジング(小型化)ターボの普及、エンジンオイルに対する要求特性が複雑化してきたことも大きな要因となっています。 省燃費、GPF (触媒)保護、耐摩耗性(油膜保護)、清浄性や酸化安定性など、これらのバランスをトータルでうまく満たそうとするとガソリン乗用車にもCカテゴリーのオイル設計が必要になってきたというわけです。 そして、ACEAもついに日本やアメリカの「ILSAC(イルサック)」にならい、燃費重視へと舵を切り、低粘度エンジンオイル(0W20)を採用したのです。
ところで、巷では「そもそも排気ガス温度の高いガソリンエンジンに、GPFのようなフィルターが必要なのか?」「ガソリン乗用車にフィルター?いまさら何の冗談だ!」「またまた欧州は新しい規制を作り出し、新たなお金儲けを始めているのか?」など、ガソリン乗用車にGPFを装着することに否定的な意見も少なくないようです。 このテーマについては、また別の機会に取り上げてみたいと思います。
ガソリン乗用車にCカテゴリーオイルが使われるようになったのはいつ頃?
簡単に歴史を辿ってみましょう。 2004年、DPF付ディーゼル車向けとしてACEA規格に「Cカテゴリー(C1/C2/C3)」が初導入されました。 それから10年後の2014年頃から、Volvoなど一部の欧州車メーカーが「0W20(低粘度)+Middle-SAPS」設計のエンジンオイルをガソリンターボ車に採用し始めました。 そして2016年には、ACEA規格C5 (0W20/5W20向け)が正式に新設されました。 その後、VWやJaguar/Land Roverなどもこの流れに追随し、ACEA C5相当(またはC5+α)のエンジンオイルがリリースされるようになりました。 2018年頃を境に、欧州ではGPFを搭載するガソリン乗用車が本格化してきた、という流れです。
ちなみに、日本では欧州ほど厳しいPM規制(とくにガソリン車に対するもの)はまだ導入されていないため、日本に輸入されているEUガソリン乗用車はGPF未装着であるものがまだまだ多いようです。 ただし、プジョー/シトロエンなど、フランス系は世界共通エンジン戦略を取っているので、最近の車種にはGPFが装着されているものと考えていた方が良いでしょう。 また、他の欧州車メーカーでもとくにフラッグシップモデルについてはGPFが装着されているものとして取り扱うのが賢明です。
0W20(ACEA C5相当またはC5+α)が指定となっているEUガソリン乗用車にもKendall GT-1 EURO+5W30が使用できます
たとえば、ACEA C5+独自要求のあるJaguar/Land Rover「STJLR.51.5122(0W20)」、VW「508.00/509.00(0W20)」、Volvo「VCC RBS0-2AE(0W20)」などの純正オイルがありますが、これらに対してもC3+αの位置づけにある「Kendall GT-1 EURO+5W30」なら十分対応可能です。 ここでいう「+α」とは、主要な欧州カーメーカーからの技術認証、つまり「ロングライフ性能」を意味します。一般的に、自動車メーカーの独自要求とは、そのほとんどが耐久性、つまり寿命に関するものです。
使用の可or不可に関するものではありません。 「Kendall GT-1 EURO+5W30」については、こちらの適合表(https://www.kendall.jp/gt-1europlus-sae5w30)もご参照ください。
あくまでも規格の上でのお話ですが、一般的なC5オイルの粘度はその多くが0W20であり、HTHS粘度(高温高せん断粘度)を低く抑えることで、燃費性能を重視した設計となっています。 しかし、0W20/C5オイルは油膜強度においては5W30/C3オイルに劣ります(一部、例外はあります)つまり、エンジン保護性能(とくに摩耗防止性能)という観点では、C3オイルの方が優れているといえるわけです。
とくに、以下のような条件では、逆にC3オイルの方が理想的かもしれません。 「高速走行が多く距離を走る車」「ターボ付きエンジン車」「オイル消費が多い車」「エンジン音が大きい車」…などです。 たとえば、0W20、Middle-SAPSの草分けであるVolvo純正オイル。 一番古いものだと、対象車は10年ほど経過した車になるのではないでしょうか。 新車ならともかく、少し前のモデルやそこそこ走っている車であれば、むしろ5W30/C3の方がよりエンジンにはしっくりくると思います。 HTHSの粘度差による燃費面ではわずかな差があるかもしれませんが、「Kendall GT-1 EURO+5W30」なら、その差以上にエンジンの長寿命化に寄与してくれるはずですので、機会があればぜひ一度お試しください。