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「金属ベルト式CVT」と「金属チェーン式CVT」~ トランスミッションフルード(オイル)に対する要求が厳しいのはどっち?潤滑状態で比較!

執筆者の写真: Kendall LabKendall Lab

皆さんこんにちは!ケンドルラボ担当のケン太です。 「もう一度所有したいクルマ」を考えてみたところ、パッと出てきたのが「フィアット・プント(2代目)」でした。すこぶる優秀な旧富士重工製6段シーケンシャルモード付CVT「フィアット・スピードギアCVT」がもたらす、1.2リッター/80馬力のコンパクトカーとは思えない「スムーズ&パワフルな走り」が忘れられません。 乗り換えを考えたことはなかったのですが、皮肉なことにCVTのトラブルでお別れとなってしまいました。


さて、今回は上述の「フィアット・スピードギアCVT」もその1つですが、日本車では「トヨタ・スーパーCVT」「日産・エクストロニックCVT」「ホンダ・マルチマチック」などなど、世界の自動車メーカーによる採用率が最も高い無段変速機の代表格『金属ベルト式CVT』と「アウディ・マルチトロニックCVT」「スバル・リニアトロニックCVT」に代表される『金属チェーン式CVT』を比較し、トランスミッションフルード(オイル)の要求特性が厳しいのはどちらか、潤滑状態の観点から見てみたいと思います。 はじめに、これら2つのCVTの「メリット」と「デメリット」をまとめてみます。




金属ベルト式CVTと金属チェーン式CVT。それぞれのメリット・デメリット


まずは、オランダ・ファンドーネ社(現・ボッシュグループ)由来の「金属ベルト式CVT」から見ていきます。 「金属ベルト式CVT」のベルトは、人が大きく開脚して跳び箱を飛ぶ姿のような形をした金属エレメントが、幾重にも重なり合って構成されています。 均質に力が分散できるため、スムーズな動力伝達が得られるうえ、金属の割に静粛性が高いことが特長です。

また、小排気量車(低トルク)に適しており、大量生産に向いていることから、2,000cc以下の乗用車にはもってこいのトランスミッションです。

一方で「金属ベルト式CVT」は、構造的に摩耗が発生しやすく耐久性に課題があることから、最大トルク350Nmを超える大排気量車では実用化が難しいのが現状です。


次に、ドイツ・Luk社(現・シェフラーグループ)由来の「金属チェーン式CVT」ですが、最大トルクが350Nm~400Nmに達する大排気量車(高トルク)に対応可能なことが最大のメリットです。 「金属ベルト式CVT」では技術的に実現不可能であったからこそ、求められ、残ってきた技術といえるでしょう。しかも「金属ベルト式CVT」よりも頑丈です。 その一方で「金属ベルト式CVT」に比べて重量が大きく、構造が複雑で製造コストが高くなるというデメリットがあります。また、金属チェーンの動作音や高回転時の振動が発生しやすいという技術的課題があるようです。


潤滑状態は3つに分類される。もっとも条件が厳しい潤滑状態はどの状態?


では、少々学術的なお話にはなりますが、トランスミッションフルード(オイル)がそれぞれのCVTで使用されているとき、その潤滑状態はどのようになっているのでしょうか?

それを知るために、まずは「潤滑状態は3つに分類される」ということを知っておきましょう。

1つ目は「流体潤滑状態」、2つ目は「境界潤滑状態」、3つ目は「混合潤滑状態」です。

実際の潤滑状態は、負荷、速度、温度、オイルの性質などの条件によって変化するのですが、ここでは分かりやすいように次のように定義します。


(1)「流体潤滑状態」とは、金属Aと金属Bの間にオイルが介在するが、AとBは直接的に接触していない状態を指します。

(2)「境界潤滑状態」とは、金属AとBの間にオイルが介在するが、AとBが直接接触してしまう状態を指します。

(3)「混合潤滑状態」とは、金属AとBの間にオイルが介在するが、「ときどき流体潤滑状態」「ときどき境界潤滑状態」といった中間的な状態を指します。

これら3つの中で、もっとも条件が厳しい潤滑状態はどれでしょうか?


正解は、直接的に金属と金属がほぼ常時触れ合っている「境界潤滑状態」です。 じつは「金属ベルト式CVT」上では、トランスミッションフルード(オイル)がほぼ「境界潤滑状態」で使われているのです。 上述しましたが、「金属ベルト式CVT」は構造的に摩耗が発生しやすく、金属接触による摩耗でCVTの寿命に大きな影響を受けるのです。

ちなみに、金属ベルトとプーリー間の接触形態は「点接触」になります。

一方「金属チェーン式CVT」はといえば、こちらは「混合潤滑状態」でトランスミッションフルード(オイル)が使われています。 そのうえ、金属チェーンとプーリー間の接触形態は「線接触」であるため、「金属ベルト式CVT」ほど負荷は大きくありません。

つまり、潤滑状態という観点から考えた場合、<金属ベルト+プーリー>で構成される「金属ベルト式CVT」と<金属チェーン+プーリー>で構成される「金属チェーン式CVT」では、「金属ベルト式CVT」のほうがトランスミッションフルード(オイル)に対する要求は厳しいというわけです(ここでは、最大トルク等は考慮しないものとします)。


AT・CVT兼用油。添加剤技術に長けたケンドルATF


ATFを「金属ベルト式CVT」でも使えるようにするには、「高摩擦係数・低摩耗」という相反する関係を作り出せる、「摩擦と摩耗」の絶妙なコントロール技術が必要です。

つまり、優れた添加剤の配合技術が鍵を握ります。

Kendall Classic ATF」および「Kendall VersaTrans LV ATF」は『金属ベルト式CVT』のみならず『金属チェーン式CVT』にご使用いただけます。 Kendall Classic ATF」および「Kendall VersaTrans LV ATF」は、熱や圧力が加わると添加剤が反応し、境界潤滑膜を形成します。 この境界潤滑膜が金属接触による摩耗から金属ベルトとプーリーをしっかりと守ってくれるのです。


日本における交換管理基準ですが、「Kendall Classic ATF」は「2万km毎または2 年毎」、「Kendall VersaTrans LV ATF」は「4万km毎または2年毎」、いずれか早い方を推奨しています。


とくに「Kendall VersaTrans LV ATF」は、AT車・CVT車に加え、欧州車に多い湿式DCTを搭載する車両にも使用可能なため、整備の現場でも大変重宝されている製品です。 Kendall ATFは全国30店舗の代理店を通じ、各地域の販売店(自動車部品商ほか)より販売しています。


この機会にCVT、CVTフルードに関する過去の記事もご参照ください。


 

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