皆さんこんにちは!「ケンドルラボ」担当・ケン太です。
稀に父のクルマを運転することがあるのですが、そこでちょっとした違和感を覚えることがあります。
私のクルマはひと昔前のATで、父のクルマは最近のCVT。
そう、父のクルマには「変速ショックがない」のです。「スムーズ」といえば確かにそうですが、何だかモヤモヤしてしまうのです。
さて、55回目のケンドルラボのテーマは、昨年5月に投稿した「意外と知られていないCVT(無段変速機)とCVTフルードのお話」の第2弾になります。
前回は簡単な「CVTの歴史」から、「CVTフルードとはATFの派生品である」こと、「CVT車が世界で一番多く走っている日本で、なぜCVTフルードがJASOで規格化されないのか?」等をご紹介しました。
まだお読みでない方はこちらをご覧ください。
大きく2種類に分かれるCVT。自動車メーカーが採用するCVTは?
プーリーで動力伝達するCVT(無段変速機)ですが、じつは大別して2種類存在していることをご存知でしょうか。
1つは世界の主流となっているオランダ・ファンドーネ社(現・ボッシュ)由来の「金属ベルト式CVT」。
形状から「Vベルト」とも表現されます。日本の自動車メーカーの大半がこの技術を導入しています。
トヨタでは「スーパーCVT」、日産では「エクストロニックCVT」、ホンダは「マルチマチック」、スバルでは「ECVT」や「i-CVT」など、それぞれが自分たちの「金属ベルト式CVT」に名前を付けています。
「金属ベルト式CVT」のメインターゲットは、軽自動車を含む2000cc以下の低・中排気量車、FF車(前輪駆動)です。
もう一つが「金属チェーン式CVT」です。こちらは90年代後半からアウディとドイツのクラッチ専業メーカーであった「LUK社(現・シェフラー)」が共同開発したCVTです。
アウディは「マルチトロニックCVT」と命名し、アウディA4、A5、A6などへ搭載。
しかし、評判がよくなかったようで、わずか15年足らずで生産終了。その後、アウディは主力トランスミッションを、現在の「DCT(S-トロニック)」へシフトしています。
アウディからCVTの生産設備を譲り受け、さまざまな改良を加え、独自のボクサーエンジンとの組み合わせで「金属チェーン式CVT」車を復活させたのがスバルです。
スバルでは「リニアトロニックCVT」と命名しました。縦置き設計のCVTでは世界初です。
「金属チェーン式CVT」は、FR車(後輪駆動)に対応可能なため、大排気量(高トルク)車に有利とされています。
今後、スバル以外の自動車メーカーにも「金属チェーン式CVT」が拡がっていく可能性もあるかもしれません。
今から36年前、旧富士重工が世界初となる「金属ベルト式CVT」をスバル・ジャスティで実用化したことを考えると「スバルイズムは常にCVTと共に」ということなのかもしれません。
覚えていますか?わずか5年で姿を消した日産独自のCVTのこと
前述の2大CVTとは別に、日産自動車が「エクストロイドCVT」という名称で、セドリック、グロリア、スカイラインGT-8の一部に搭載していた非プーリー型CVTの存在を覚えている方はいらっしゃるでしょうか?
かくいう私はその世代ではなく…以下は上司から聞いた話です。
当時は画期的な新技術としてNHKの番組内でも大きく取り上げられ、純正フルード「KTF-1」はガラスのように化学反応するトラクションオイルとして紹介されていました。
そんな「エクストロイドCVT」ですが、その後一体どうなったのでしょうか?
最近はめっきり話題にも上がりません。
じつはその後、ある技術的な弱点が発覚。
世界では通用しないことが判明したため自動車の駆動系システムからは姿を消すことに。
1999年に実用化され、2004年に生産終了という短命の技術ですが、このハーフトロイダルの技術は今日、自動車以外の産業で活用されていると聞きます。
巷で語られる「滑らせる油」と「滑らせない油」というお話の真実とは?
それでは、Kendallらしくオイルのお話で今回のケンドルラボを締めくくりましょう。
巷には「ATFは滑らせる油」、「CVTフルードは滑らせない油」と表現し、あたかもATFとCVTフルードは真逆の性質を持つ異種のオイルであるかのように宣伝をしている業者さんがおられますが、CVTフルードはATFの派生品です。
CVTシステムではATFそのものの性能も不可欠であり、なくてはならないものです。
そもそもATにもCVT(乾式タイプ除く)にも「湿式クラッチ」が装着されていますので、ATF、CVTフルード共に「滑ってはいけない油」と表現されるのが正解のように思います。
言葉遊びに惑わされないようにしましょう。
「Kendall Classic ATF」および「Kendall VeraTrans LV ATF」は、標準ATF+αの技術(添加剤技術やポリマー技術)によって、一般的なステップATはもちろん、「金属ベルト式CVT」、「金属チェーン式CVT」にも使用することができます。
詳しくは各製品紹介をご参照ください。
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