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セレスピードやデュアロジック等「2ペダルMT」用「あのオイル」のお話

皆さんこんにちは!Kendallラボ担当・ケン太です。

Kendallラボではこれまでにも度々、AT(オートマチックトランスミッション)、CVT(無段変速機)といったクルマの「変速機」と、それらに必要なオイル(ATF、CVTF)に関する話題を扱ってきました。


今回も変速機とオイルのお話ではありますが、ATでもCVTでもなく、「2ペダルMT」に関するお話です。

「2ペダルMT」のクルマを所有されている方で、「あのオイル」を点検していない方、あるいは、その存在すらご存じない方・・・意外と多いのでは?できれば「あのオイル」も気にかけてあげてください。


※記事中の「2ペダルMT」とは「シングルクラッチ式2ペダルMT」を指します。




「2ペダルMT」とは?一般的な「AT(オートマ)」とは違うの?

「2ペダルMT」とは、「クラッチペダルが無い(クラッチ操作が要らない)MT」のこと。

「セミオートマ」、「機械式MT」または「AMT (Automated Manual Transmission)」とも呼ばれ、AT(オートマ)車しか運転できない「AT限定免許」の方でも運転できます。

そのため「2ペダルMTとATは同じ」と思われがちですが、本当は「まったくの別物」です。


AT車の場合、エンジンが生み出す力をトランスミッションに伝える動力伝達装置(発進装置)に「トルクコンバータ」が使われる場合がほとんど。

一方の2ペダルMT車の場合、動力伝達装置はトルクコンバータではなく、MT車と同じ「クラッチ」です。

「2ペダルMT車はクラッチペダルがないのに、どうやってクラッチを操作するの?」と思いませんか?


2ペダルMT車のクラッチ操作は、コンピュータと油圧によって行われます。

2ペダルMTの代表格(?)が、アルファロメオの「セレスピード」。手元にあるアルファ147の取扱説明書を見てみると「マニュアルトランスミッションに電子制御式油圧作動クラッチを組み合わせ『セレスピード』と呼んでいます」とあります。


セレスピードのクラッチ操作を大まかに説明しますと、「セレスピードポンプ」と呼ばれるポンプから「セレスピードオイル」が送り出され、その圧力を使ってクラッチをつないでクルマを走らせる・・・そんなイメージです。


ちなみに、セレスピード以外にも欧州ではセミオートマ的なミッションが流行っていますが、なぜでしょうか?それは、北米や日本とは市場性が異なり、欧州ではAT車よりも純粋なMT車(3ペダル式)の普及が圧倒的に高いことが根底にあるからです。


2ペダルMTの基本構造そのものは、MT(マニュアルトランスミッション)です。

そのため、欧州の自動車メーカーはMT車(3ペダル式)と多くの部品を共通化できるというメリットが大きく、開発・製造コストを抑えられることから、ATとMTの中間的なAMTを積極的に採用してきたのです。



フィアット500やパンダ、イプシロンにも必要な「あのオイル」とは?

では、本題に戻ります。2ペダルMTの代表例として、アルファロメオのセレスピードを紹介しましたが、基本的な仕組みが同じ2ペダルMTとして、フィアットの「デュアロジック」があります。

可愛らしい見た目と、元気の良い走りで人気の「フィアット500」などに搭載されています。


そして、ランチアの「D.F.N.(Dolce Far Niente)」。

これらのルーツはいずれもイタリア(マニエッティ・マレリ社)にあります。

「Dolce Far Niente」とは、イタリア語で「何もしない喜び」という意味だそうです。

粋なネーミングですね。


ここで挙げたセレスピード、デュアロジック、DFNという3つの2ペダルMTはルーツが同じだけあって、その仕組みも似ています。

3種類の2ペダルMTの共通点は「自動油圧制御」ということ。動かすためには、油圧作動油が必要です。


もうお気付きでしょうか?冒頭で触れた「あのオイル」とは、セレスピードオイル、デュアロジックオイル、DFNオイルと称する油圧作動油のこと。

「ギアオイルとは別に、油圧作動油が必要だとは知らなかった!」という方も多いのではないでしょうか?



では、セレスピードオイルって、どんなタイプの油圧作動油なの?

まず、現在のセレスピードオイルについて公開されている資料を見る限りでは、代表性状で動粘度@100℃は「6.8 cSt」、@40℃は「24.05 cSt」となっており、外観はオイル(アメ)色で着色はありません。

流動点はマイナス51℃です。


そして、おもな原材料には「水素化デカ-1-エンダイマー」や「ポリ(1-デセン)」等の表記が見られます。これらは別名PAO(ポリαオレフィン)のことですので、現在のセレスピードオイルは、「化学合成ベースオイルを主体とする油圧作動油」ということになります。


前々回のKendallラボ『ハンドル操作を助けてくれる、通称「パワステオイル(PSF)」の正体とは?』の中でも触れていますが、油圧作動油にPAO(ポリαオレフィン)を採用するおもな理由としては、「低温流動性」を重視していることが挙げられます。

ロシアやカナダをはじめ、いかなる極寒地であっても、エンジン始動と同時に「セレスピードポンプ」がスムーズなポンピングで、正常に作動しなければなりませんから。


一方、セレスピードはシステム上、油圧作動油の温度が上昇しやすく、高温になりやすいという特徴があります。

そこで、熱劣化にともなう摩耗粉やスラッジの発生を長期抑制するため、PAO(ポリαオレフィン)を採用し、ロングライフ化を追求していることが伺えます。


では、2ペダルMTの油圧作動油は、どのくらいのスパンで点検・交換をすれば良いのでしょうか?先ほどと同様、アルファ147の取扱説明書を見てみますと「渋滞の少ないイタリアでは20,000kmごとの点検を基本にしていますが、日本国内ではさらに早めの点検が必要です」とあります。


ところが、セレスピードオイルの交換についての記述はなく「オイルが不足していれば補充」とあります。

デュアロジックについては「交換の必要なし」とのこと。

つまり、現在のセレスピードオイル、デュアロジックオイルについて、メーカーは原則無交換を推奨していることがわかります。



セレスピードオイルは、DEXRON-III規格のATFじゃないの?

巷では、セレスピードオイルがあの旧DEXRON-III規格のATFだと思っている方が少なくありません。

実のところ、昔のセレスピードオイルは、旧DEXRON-III ATF相当のオイルであったと聞いています。

しかし、現在のセレスピードオイルはそれとは違います。


ただ、セレスピードオイルはあくまでも油圧作動油ですので、ベースオイルが化学合成系であろうが、鉱油系であろうが、その役割と基本特性(粘度ほか)から判断し、事実上旧DEXRON-III規格のATFで代替利用できることは、とくにオイル業界の方ならご存知のことでしょう。


事実、私たちのお客様(整備業者)には、セレスピードオイルやデュアロジックオイルの代替として「Kendall Classic ATF」をお薦めしており、数多くのアルファロメオ、フィアットのクルマで使用実績があります。


ただし、セレスピードオイルの代替として「Kendall Classic ATF」を使用する場合は、必ず定期交換が前提となることをお忘れなく!交換サイクルは「20,000km毎または2年毎」、いずれか早い方を目安としてください。


もちろん、ワンランク上のクラス「Kendall VersaTrans LV ATF」もご利用いただけます。こちらは「40,000km毎または2年毎」が交換サイクルの目安です。

 

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