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執筆者の写真Kendall Lab

ハンドル操作を助けてくれる、通称「パワステオイル(PSF)」の正体とは?

皆さんこんにちは!Kendallラボ担当・ケン太です。

随分と昔の話ですが、知人が所有する希少なスポーツカーを運転する機会がありました。シートやミラーの位置を合わせ、出発しようとした矢先、予想外の出来事が・・・。

そのクルマには「パワステ」が付いていないうえに、驚くほどの極太タイヤが装着されており、簡単に動かせないステアリングに四苦八苦させられたのです。

あの日の帰り道、愛車のパワステに感謝せずにいられませんでした。


そんなこんなで、今回のKendallラボのテーマは「ハンドル操作を助けてくれる、通称『パワステオイル(PSF)』の正体とは?」です。

まずは、今では当たり前の装備となっている「パワーステアリング」の基礎を簡単に確認した後、パワステに欠かせない「パワステフルード」について、知っておいていただきたいことをお話ししていきます。




パワステの種類・仕組みを理解すれば、パワステオイルの正体がわかる

クルマの進む方向を変えるために、左右に回しながら操作する「ステアリング(ハンドル)」。

車庫入れや縦列駐車といった場面でも、クルクルッと簡単にステアリングを回せるのは、「パワーステアリング(以下、パワステ)」という便利な装置のおかげです。


一般的な乗用車の場合、その重量は大体1~2トン。

少なくともクルマの重量の半分を支えているのは、ステアリングで操作する2本の前輪ということになります。

数百kg以上もの重量がかかる前輪を、右へ、左へと軽々と動かすことを可能にしてくれるのがパワステです。そんなふうに考えると、パワステのありがたさを実感できるのではないでしょうか?


はじめに触れた通り、パワステはステアリング操作を強力にアシストしてくれる便利な装置ですが、その種類は3つに分けられます。

1つ目は油圧を使ってアシストしてくれる「油圧式」、2つ目は油圧の代わりにモーターの力を使ってアシストしてくれる「電動式」、3つ目は油圧とモーターの両方を使ってアシストしてくれる「電動油圧式」です。


3つのうち最も歴史が古く、ベーシックなのが「油圧式」のパワステです。エンジンの力を使って動く「パワステポンプ」が発生させた油圧を、ステアリングの回転に合わせて前輪を動かす歯車(ギア)に伝え、ステアリング操作をアシストする・・・という仕組みです。


パワステポンプが「油圧」を発生させるためには、もちろん「油」が必要になりますね。その油こそが、通称「パワステオイル」です。

正式には「パワーステアリングフルード(以下、パワステフルード)」という油圧作動油になりますので、この機会に覚えておいてください。



パワステフルードの代わりにATFを使っても大丈夫?

繰り返しになりますが、パワステフルードとは「耐摩耗性」油圧作動油のことです。

粘度は大体ISO VG22-32です。また、パワステフルードには世界共通規格がありません。

その裏付けともいえるのですが、パワステフルードの外観はアンバー(飴色)、赤色、緑色など、各社製品はバラバラ。色は潤滑油専用の染料によるもので、性能とは関係がありません。


欧州乗用車の純正パワステフルードは、緑の着色を施している場合が多くなります。

また、名称も「ハイドロオイル」と表現することもあるため、一見特殊な油だと思われがちです。

しかしながら、その正体は顔色を変えているだけの「耐摩耗性」油圧作動油です。


パワステフルードは「パワステを動かすための油圧作動油」とお話ししましたが、交換が必要となった場合、必ずしも「パワステ専用油」を使用する必要はありません。パワステフルードの基本特性として最も重視されるポイントは、10万回以上のハンドリングテストなどにも耐えうる“耐摩耗性能”と適切な“粘度”です。

ATF(オートマオイル)は、耐摩耗性を有する油圧作動油でもあり、粘度も同じレンジに属しますので、パワステフルードとしても無理なく使用することができます。


なお、パワステは重要保安部品の一つですので、当社では一般の方がDIYで交換されることは推奨していません。

そのため、一般の方の目に触れる機会は多くないのですが、私たちケンドルの「Kendall Classic ATF」は、トランスミッション用としてだけでなく、車種を問わず、数えきれない台数の乗用車やトラック・バスの「業務用パワステフルード」として全国の自動車整備工場や専門ショップでお使いいただいており、好評を得ています。



最新の純正パワステフルードは「低温流動性」が重視される傾向に

最新の自動車メーカー純正パワステフルードは、システムが従来の油圧式から電動油圧式へ移行していることもあり、さらなる省燃費・ポンピング効率追求のため、エンジンオイルやATFほどではありませんが、低粘度化しています。


また、エンジンやトランスミッション同様、パワステの場合も世界を制するには「低温環境を制する」ことが重要なのだそうです。

従って、カナダやロシアといった極寒地であっても、エンジン始動時から適切なステアリングが維持できるよう、最新の純正パワステフルードは「低温流動性」が重視されたスペックになってきています。

いわゆる極寒地仕様です。


そのため、純正パワステフルードの中には、低温域でより有利に働く化学合成油「PAO(ポリアルファオレフィン)」を意図的に配合しているものも見受けられます。


日本では、120年前の1902年(明治35年)1月に北海道旭川市で記録された「マイナス41℃」が最低気温の記録となっています。

この記録は120年たった現在でも更新されていません。昨今の北海道なら、真冬にどれだけ寒くなったとしても、マイナス20℃くらいではないかと思います。


Kendall Classic ATF」の流動点はマイナス40℃くらいありますので、日本国内で使われるのであれば低温流動性も全く問題ありません。

ちなみに、低粘度なパワステフルードが求められる電動油圧式には「Kendall VersaTrans LV ATF」をお薦めしています。


 

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