「もっと買って!」と大統領はいうけれど…アメリカ車が日本で売れない理由
- Kendall Lab
- 13 分前
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皆さんこんにちは!「ケンドルラボ」担当・ケン太です。 少し前の話ですが、キャデラックが新型EV「リリック」を日本市場に送り込んできました。 このクルマはアメ車にもかかわらず「右ハンドル」の日本仕様です。 キャデラックとしては12年振りの右ハンドル車になるのだとか。 日本でも注目されそうなスタイリッシュなSUVで、価格は1,100万円から。 フル充電で510km走行可能だそうです。
右ハンドル仕様は、新たに日本向けに作られたものではなく、もともとニュージーランドやオーストラリア向けだったようです。 それでも右ハンドルのキャデラックを素直に歓迎したいところです。 日本向けの右ハンドル車を2026年までに3車種投入するということですから、今後のキャデラックの巻き返しを楽しみにしておきましょう。
唐突にスタートしますが、今回のケンドルラボは「アメリカ車が日本で売れない理由」を考えてみます。 魅力的なクルマは色々あるハズなのですが…なぜ売れないのでしょう?

トランプさんのいう通り?本当にアメリカ車は日本で売れていないのか?
「トランプ関税」のニュースで報じられた通り、トランプ大統領はアメリカ車が日本市場で販売台数を伸ばせないことについて「日本はアメリカ車を受け入れていない」「我々は日本で1台もクルマを売っていない」などと訴え、とても不満そうです。 日本にも熱狂的なアメ車フリークは存在しているハズですが…残念ながら、彼らの多くは最新型のアメリカ車に無関心な様子。 トランプさんの発言は決して大げさなものではなさそうです。
それでは、アメリカ車は日本でどのくらい売れているのでしょうか? 日本自動車輸入組合(JAIA)が発表している「輸入車新規登録台数」という資料を見てみましょう。 今年(2025年)7月のデータによると、輸入車の新規登録台数は7月の1か月間で18,985台。 昨年同時期より15.8%増だったそうです。※このデータにテスラの数字は入っていません。
海外メーカー製の乗用車に絞って見てみると、1位はメルセデス・ベンツで4,349台となります。
2位はBMW(2,429台)で、3位フォルクスワーゲン(2,128台)、4位アウディ(1,927台)、5位BMW MINI(1,423台)となり、以下はボルボ、ポルシェ、ランドローバーといった日本でも人気のメーカー・ブランドが続きます。
アメリカ車の最上位はJeepの701台。 海外のメーカー・ブランドとしては9位に位置します。 Jeepから随分と離れた場所にキャデラックの名前が出てきますが、台数はわずか47台。 さらに下のほうにシボレー20台、フォード16台、ダッジ15台、ポンティアック1台、クライスラー1台となっており、アメリカ製の乗用車は全部で1,000台にも届きません。
2024年度(2024年4月~2025年3月)の数字を見てみると、JEEPが9,721台、シボレーが518台、キャデラックが468台、フォードが220台など、全部あわせて約1万1千台といったところ。 1位のメルセデス・ベンツは約5万3千台、2位のBMWは約3万7千台ですから、とても太刀打ちできません。 アメリカ車全体(ほとんどがJeep)の台数がボルボやポルシェと同じくらいです。
このように、データで見ると「アメリカ車は日本で売れていない(Jeepを除く)」のは間違いありません。 それにしてもJeepは頑張っていますね。
アメリカ車が日本で売れない理由は?「アメ車のイメージ」が悪すぎる?
アメリカは日本ととくに関係が深い国であり、NHKの調査でも長年にわたってアメリカが「いちばん好きな外国」に選ばれ続けていました。 にもかかわらず、日本人はアメリカ製のクルマを選ぼうとはしません。 いったいナゼでしょうか? まずは、一般的な日本人が持つ「アメ車に対するイメージ」を挙げてみましょう。
(1)とにかくデカい!普段使いには大きすぎて不便!
(2)大排気量で燃費が悪い!環境にも悪い!
(3)すぐに壊れる!信頼性が低いクルマには乗れない!
(4)派手または奇抜なデザインで目立ってしまう!
(5)左ハンドルしかない!慣れるまでが大変!
「アメ車に対するイメージ」は、概ね上に挙げたようなものだと思います。 (1)については一部の車種を除けば「その通り」ですが、国土も道路もスケールが違うので、これは仕方がないでしょう。 (2)については大きなクルマが多いこともあり、大排気量車が多いのは事実です。 しかし、最近では環境意識の高まりもあり、アメ車=大排気量とはいえなくなってきました。 各メーカーは燃費性能・環境性能の向上にも積極的に取り組んでいます。 ハイブリッドの設定が豊富なら、もう少しは売れていたのでしょうか?
(3)については「自動車の品質ランキング」といった記事で、アメリカ車はワーストの常連といわれています。 ただ、欧州のメーカー・ブランドも同様に、その不名誉なランキングに名前を連ねています。 日本の道路事情や気候なども考慮すると、アメリカ車であろうと欧州車であろうと、トラブルが出やすくなるのは仕方がないのかもしれません。
(4)のデザインについては、従来の「アメ車」のイメージから大きく変化しています。 アメ車の特長のひとつである直線的なボディラインを受け継ぎながら、よりスポーティーなデザインのクルマが増えています。 ギラギラとしたメッキの装飾なども随分と控えめになりましたが、アメリカ車ならではの重厚感や華やかさはしっかり息づいています。
(5)の「右ハンドルの設定がない」はたしかにそうですね。 左ハンドルは乗ってしまえばすぐに慣れるのですが、不便に感じる場面はどうしてもありますね。 初心者の方やそれほど運転が好きではない方からすれば、「左ハンドルのみ」というハードルは高すぎるでしょう。 右ハンドル車を用意しているJeepを見れば、やはり右ハンドルはあったほうが良さそうです。 ちなみに、当社の社長は今年のゴールデンウィークに大阪のグランフロントでキャデラック・リリックが展示されているのを偶然見かけ「せっかくの右ハンドルなのにEVだけ。ガソリン車があれば乗ってみたい」素直にそう思ったそうです。
残念なことに、アメリカ車は進化しているのにイメージは昔のままでアップデートされていません。 結局のところ、アメリカ車が日本で売れない大きな理由は「ネガティブなイメージを払拭できていない」「ブランドイメージが確立されていない」といったことや「販売網が弱い(近くで買えない/メンテナンスできない)」といった点ではないでしょうか。 日本市場で健闘しているJeepを見ていると、ますますそんな気がしてきます。