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意外と知られていない自動車メーカーのサブブランドのお話(欧州メーカー編)

  • 執筆者の写真: Kendall Lab
    Kendall Lab
  • 6月18日
  • 読了時間: 7分

皆さんこんにちは!「ケンドルラボ」担当・ケン太です。 近年はスポーティーあるいはラグジュアリーなイメージを押し出した「サブブランド」のクルマが目につきます。 そこで今回のケンドルラボは、自動車メーカーのサブブランドについてのお話です。 今回はとくに、欧州自動車メーカーが展開する世界的な5つのブランドについて取り上げてみます。




メルセデス・ベンツが展開する圧倒的知名度を誇るブランド「AMG」


「AMG(正確にはメルセデスAMG)」はメルセデス・ベンツの中で、卓越したパフォーマンスと高いドライバビリティを備えたモデルに特化したブランドです。 AMGの名を冠する各モデルは、エンジンやサスペンションはもちろん、トランスミッション、電子制御デバイスに至るまで徹底したチューンが施され、理想とする「走り」へのこだわりを表現する1台に仕上げられています。 パッと見から「ただモノではない」オーラが漂います。


メルセデス・ベンツのスポーティーなイメージを象徴するブランドAMGのルーツは、1967年に2人のドイツ人エンジニアが立ち上げた独立系チューナー(レースエンジンの設計会社。1999年にメルセデス・ベンツ傘下に)です。 創業者のハンス・ヴェルナー・アウフレヒトの「A」、エルハルト・メルヒャーの「M」、アウフレヒトの出生地グロースアスパッハの「G」を組み合わせて「AMG」となりました。 なお、読み方は「アーマーゲー」ではなく「エーエムジー」です。


AMGのエンブレムに描かれているのは「川沿いのリンゴの木」「カムとバルブ」「月桂樹」です。 リンゴの木は、AMGの本拠地であるアファルターバッハの紋章から。 カムとバルブはAMGが持つ「技術力」「開発力」を示しており、月桂樹はいうまでもなく「勝者の証」です。 AMGのほかにも、欧州にはポルシェ、BMW、アルファロメオ、プジョーなど、エンブレムで地元へのリスペクトを表現する自動車メーカーが多いですね。

AMGの最大の特徴と魅力は、エンジンにあるといえます。 AMGのエンジンは圧倒的なパワーとレスポンスを備えていますが、注目すべきはそこだけではありません。 「One Man,One Engine.」の哲学のもと、1基のエンジンを1人の熟練技術者(マイスター)が手組みで製作しているのです(AMGが手掛けるのはエンジンのみ)。 大量生産される標準モデルのエンジンとは異なり、マイスターの手で丹精込めて、より高い精度で組み上げられるAMGのエンジン。 マイスターの手による手組みのエンジンには、AMGのエンブレムとマイスターの名前が一緒に刻印された特別なバッヂが装着されています。

※某動画投稿サイトに、マイスターによる組み立て工程を見られる動画があります。


標準的なメルセデス・ベンツのモデルには、アルミホイールやエアロパーツなどでスポーティーな外観に仕立てたり、サスペンションやブレーキを強化したりした「AMGライン」が存在しています。 しかし、それらは純粋なAMGモデルとは異なります。 「A35」から「GT R」まで、AMGのいくつかのモデルに乗車する機会がありましたが、エンジンをかけた瞬間に「まるっきり別物」であることがハッキリわかります。 AMG、スゴイです。


超高級車「マイバッハ」はメルセデス・ベンツのラグジュアリーブランド


メルセデス・ベンツのラグジュアリーブランドといえば、マイバッハです。 そのWebサイトには「伝統的なクラフトマンシップと唯一無二の美しさ」と表現されています。 なお、こちらもAMGと同じく、正確には「メルセデス・マイバッハ」だそうです。


もともとマイバッハは1909年から1960年まで存在した、ドイツのエンジンメーカーです。 紆余曲折を経て2014年からメルセデス・ベンツのサブブランドとして復活。 現時点(2025年6月)で日本に導入されているのは、セダンの「メルセデス・マイバッハSクラス」、SUVの「メルセデス・マイバッハEQS SUV」「メルセデス・マイバッハGLS」の3モデル。 ちなみに価格は2,790万円からとなっていますが、オプションなど各種装備を追加していくと、価格はドーンと跳ね上がっていくのでしょう。


驚くような価格ですが、実車に乗れば納得です。 「五感を満たす、極上の空間」とWebサイトにあるように、「これがクルマなのか?」と疑うほどの贅沢なインテリア。 照明や音響も過去に体験したことがない上質なもの。 後席シートの中央に設置されるのは、シャンパンとグラスを冷やすクーリングボックス(オプション)。 庶民の私は「五感を満たす」どころか、非日常すぎてまったく落ち着けそうにありません。 ところが、シートの素材や造りが素晴らしく、身を委ねれば一瞬で安らぎモードに。 マイバッハ、おそるべし。


BMWのスポーツカーブランドといえば「M」。転換期を迎える「ALPINA」


メルセデス・ベンツのAMGと双璧をなすスポーツカーブランドといえば、BMWの「M」を挙げることになるでしょう。 モータースポーツの世界においても、メルセデスAMGとBMW Mの白熱のバトルは見ものです。 こちらもWebサイトを見てみると「禁断のドライビング・フィールへ、ようこそ」「BMWがサーキットで鍛え上げた、究極のスポーツ・ドライビングの証」などとあります。


それもそのはず、「M」のルーツは1972年に設立されたBMWのレース部門「BMWモータースポーツ社」。 「M」というブランドは、モータースポーツの頭文字「M」が由来なのですね。 BMW「M」といえば「ブルー/ネイビー/レッド」のストライプ(ポルシェやランチアを彩った「MARTINI RACING」ではありません!)を思い出すのですが、もともとは(1973年~)「ブルー/パープル/レッド」だったとは知りませんでした。 現在の「ブルー/ネイビー/レッド」は2020年3月に刷新されたものだそうです。


BMWのWebサイトで確認したところ、現時点で日本に正式に導入されているBMW「M」シリーズのモデルについては、以下の3系統に大別されています。


■Mハイ・パフォーマンス・モデル/公道走行も可能な、究極のレーシング・スポーツ

■Mパフォーマンス・モデル/サーキットも攻められる、高性能スポーツカー

■Mモデル(電気自動車)/電気のパワーが切り拓く、新たなる「M」の世界


具体的にどんなモデルがあるのかを確認したところ、なんと全部で37ものモデルが存在していました(2025年6月現在)。 内訳は「Mハイ・パフォーマンス・モデル」が13、「Mパフォーマンス・モデル」が16、「Mモデル(電気自動車)」が8。 セダンやクーペだけでなく、SUVやカブリオレ、ステーションワゴン(BMWは「ツーリング」といいます)まで、あらゆるボディタイプに「M」の設定が。これはさすがに多いような気が…。


2026年から新たにBMWのサブブランドとなるのは、BMWの車両をベースにしたオリジナルモデルを手掛ける「ALPINA(アルピナ)」です。 ALPINAは年間に約2,000台(約300台が日本へ)を製造・販売する独立した自動車メーカーで、ALPINAのクルマの大半はパートナーであるBMWによって販売されています。


1965年1月1日に設立されたALPINAは、60年目の2025年12月31日に事業を終了。 2026年からBMWのサブブランド(ラグジュアリーブランド)として新たな歴史を刻んでいくことになっています。 その背景には「自動車の電動化・自動化」「環境・安全に関する規制強化」などの課題があります。 来年以降、ALPINAブランドとしてどのようなモデルが登場するのか楽しみにしておきましょう。


刺激的な走りを予感させるサソリのエンブレム!フィアットの「ABARTH」


「メルセデスAMG」「BMW M」という2大スポーツカーブランドに引けを取らないのが、イタリアの名門・フィアットのサブブランド「ABARTH(アバルト)」です。 黄と赤をベースにした盾の中央にサソリを配したエンブレムはインパクト抜群。 刺激的な走りを予感させます。そんなABARTHのルーツも、当然のごとくモータースポーツにあります。


自身がレーサーでもあり、エンジニアでもあったカルロ・アバルトによって、1949年に設立された「Abarth&C.」。 フィアット車のチューナーとして数々の勝利を獲得。 1971年のフィアットとの合併(フィアットによる買収)後は、フィアットのモータースポーツ部門として多数の名車を手掛けます。 80年代から90年代にモータースポーツシーンを席捲したアルファロメオ155、ランチア・ラリー037、ランチア・デルタS4/HFインテグラーレなどのマシンにもアバルトの息がかかっています。


サソリのエンブレムの由来は、創設者のカルロ・アバルトの星座が「さそり座」だったことから(カルロ・アバルトの誕生日は1908年11月15日)。もともとコンパクトなクルマづくりを大の得意としていたフィアットに、「小さくても強い」サソリのイメージはピッタリ合致します。


現時点(2025年6月現在)で日本に導入されているABARTHのモデルは、フィアット500(チンクエチェント)をベースにした「ABARTH500e(EV)」「F595」「695turismo」「695competizione」の4モデルのみ。 今後、チンクエチェントは「EVのみ」となるようですので、ガソリンエンジンでサソリの刺激を味わいたい方はお早めに!


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