皆さんこんにちは!Kendallラボ担当・ケン太です。
私が初めて買ったクルマは、エンジンを車体の中央付近に搭載する「ミッドシップ」のクルマでした。ある日、ガソリンスタンドに行くと、「ボンネット開けてくださーい!エンジンオイルをチェックしまーす!」という元気な声が響きました。
言われた通りにボンネットを開けると、そこにあるはずのないエンジンを、店員さんが不思議そうに探していました。若い頃の懐かしい思い出です。
セルフサービスではない、店員さんによるフルサービスのガソリンスタンドは珍しくなりました。
店員さんによるエンジンオイルのチェックでよくある「エンジンオイルが真っ黒ですよ!」「交換したばかりなんだけど・・・」というやり取り、じつはエンジンオイルが黒くなるのは、汚れや劣化だけが理由ではないのです。
エンジンオイルが黒くなる理由その1「汚れを取り込むから」
一般的なクルマは、ガソリンなどの燃料を爆発・燃焼させ、そこで発生した力を利用して走行します。
したがって、エンジン内部では、どうしても燃料の燃えカス(スス・スラッジなど)が発生し、堆積していきます。
そして、大量の燃えカスが堆積していくと、エンジンは少しずつ調子が悪くなっていき、やがて故障につながっていきます。
そのような事態に陥るのを防ぐのが、エンジンオイルの「清浄分散作用」です。
エンジンオイルに含まれる添加剤の働きにより、常にエンジン内部の汚れを取り込み、スス・スラッジがエンジンの各部に付着・堆積するのを防いでいます。
次にエンジンオイルを交換するタイミングが来たら、真っ黒に汚れたエンジンオイルをじっくりと見てみましょう。
エンジン内部の汚れを取り込んで、真っ黒になったエンジンオイルの中に、キラキラと光る小さな粒が見えることがあります。
それは燃えカスなどの汚れではなく、エンジン内部の部品が接触・摩耗などの理由により、削れて発生した鉄粉です。
真っ黒になったエンジンオイルには、汚れ以外にも色々なものが混ざっているんですね。
エンジンオイルが黒くなる理由その2「酸化劣化するから」
ご存知の通り、エンジンオイルは燃料の燃焼・爆発を繰り返すエンジン内部で、常に高熱にさらされています。
エンジンオイルには、熱を吸収してエンジンを守る「冷却作用」がありますが、いつまでもその力が続くわけではありませんし、熱によってエンジンオイルそのものの酸化劣化も進みます。
熱による酸化劣化は、エンジンオイルが黒くなる理由の一つです。
また、エンジンオイルは空気に触れると、他の物質と同じように少しずつ酸化していきます。
エンジン内部は密封状態にはなっていますが、完全に密封されるわけではありません。
先ほど挙げたように、熱にさらされたり、空気に触れたり、汚れを取り込んだりしながら、エンジンオイルは段々と酸化劣化し、汚れ、黒くなっていくのです。
エンジンオイルが黒くなる理由その3「酸化防止剤の影響」
これは最新のエンジンオイルに見られる傾向なのですが、先ほどお話しした「熱」による酸化劣化を防ぐための添加剤「酸化防止剤」の影響で、エンジンオイルが黒くなっているように見えることがあります。
これは、最新のエンジンオイルに含まれる酸化防止剤に、熱や光、圧力などの影響が加わることで、「酸化防止剤そのもの」が黒く変色してしまうためです。
オイル交換をしてから5,000km程度クルマを走らせると、エンジンオイルの表面が黒っぽく見えてきます。これが、先ほどお話ししした「酸化防止剤そのもの」が、熱・光・圧力などの影響で黒く変色している状態です。
この場合、エンジンオイル全体が酸化劣化して黒く変色しているわけではありませんし、エンジンオイルの基本性能にも影響はありません。
そういえば・・・私がまだ3,000km~5,000km毎にオイル交換をしていた頃は、排出されて溜まったエンジンオイルが「真っ黒」に見えても、オイルパンから出てくるエンジンオイルは「飴色」でしかもサラサラ・・・そんなことがあったのを思い出しました。
すでに酸化劣化してしまったエンジンオイルの場合、透明感はまったく確認できません。
しかし、酸化防止剤だけが変色しているエンジンオイルの場合は、エンジンオイル全体の色がわかり、透明感もきちんと確認できます。
両者を透明のビーカーやコップなどに入れると、それなりの量になるため「パッと見」ではどちらも黒く見えます。
ところが、ステンレスの板などに少量を垂らしてみると、その差が分かりやすくなります。
酸化劣化したエンジンオイルのほうは、やはり真っ黒です。さらに、粘度も増加しているため、本来の粘度以上にドロッとしていて流動性も悪くなります。
エンジンオイルの劣化具合は「エンジンオイルの色」だけでなく、走行距離や期間、粘度の状態なども加味して、総合的に判断することが大切です。