top of page
  • 執筆者の写真Kendall Lab

ATFの交換時期が「2万kmごと」といわれる理由

皆さんこんにちは! Kendallラボ担当・ケン太です。

長かった梅雨(こちら近畿地方では、観測史上最長の62日間)が明け、一気に真夏に突入しました。

ここ数年、猛暑の勢いは増すばかりで体調管理が難しいですが、クルマにとっても猛暑は大敵。

大切な愛車にも、できる限りのメンテナンスをしてあげましょう。


愛車のメンテナンスで欠かせないのが、オイルやタイヤといった消耗品の交換ですね。

カーディーラーでは、積極的に交換を勧められるエンジンオイルですが、オートマオイル(以下、ATF)の交換を勧められた経験をお持ちの方は多くないと思います。


日本では、カーディーラー以外で市販されているATFの多くは交換時期が「2万kmごと」となっていますが、なぜそうなっているのでしょうか?

今回のKendallラボでは、ATF交換の歴史を振り返りながら、その背景を探っていきます。



日本でATFの交換が行われるのは95年以降

90年代前半、日本の整備業界では「ATFは交換してはいけないオイル」あるいは「交換する必要がないオイル」とされていました。

「交換するとミッションが壊れるから止めた方がいい」といった認識が大勢を占めており、ATFの交換に積極的な整備士はほぼいない時代です。また当時は、現在のような優れたATFの自動交換機器もありませんでしたし、積極的にATFを販売しようとするオイルメーカーもありませんでした。


当時のATFの技術水準について、ある自動車メーカーの技術者が講演の場で、昔を振り返りながら「日本のようなシビアコンディション下において、自分達の純正オイルは当時6万kmも走れば“ほぼ限界”といわれるものだった」という印象的なお話をされていました。


1995年7月、日本でもアメリカ同様に、「製造物責任法(PL法)」が施行されることになりました。

それに合わせて、ATF交換機器の普及が後押しする形で、整備工場、ガソリンスタンド、カー用品店などにおいて、ATF交換が盛んに行われることとなりました。


その後、長い時間を経てオートマチック本体(以下、AT)の技術革新が進みます。

クルマの燃費効率向上を主目的として、ATは多段化。

3速、4速は5速、6速、7速へ・・・やがて10速まで多段化が進み、現在に至ります。

そして、ATの重要部品のひとつでもあるATFも、エンジンオイルと同様に低粘度化が進み、耐久性を向上するためのロングライフ化も進んでいます。



ATFの交換時期が2万kmなのは「キリが良い」から?!

日本では現在も市販されているATFの多くは交換時期が「2万km」といわれていますが、これはなぜでしょうか?

あまり知られていませんが、ATFの交換時期が「2万km」とされる根拠は、前回のKendallラボで少し触れたゼネラルモーターズ社の「DEXRON規格の基準」がもとになっています。


先ほどの“ATF交換の歴史”でも触れた通り、日本でATFの交換が盛んに行われるようになったのは、95年以降。当時主流のDEXRON規格はDEXRON-IIIと呼ばれるものでした。

DEXRON-III規格では、シビアコンディション(最も過酷な使用条件)下において、1万5千マイル(約2万4千km)という管理基準がデータとして公開されていました。


この管理基準は、渋滞の多いニューヨークやアジア諸国が対象です。もちろん、日本もそのシビアコンディションにあたります。

しかし、ATFの交換時期が「約2万4千km」というのは、ちょっと中途半端ですし、覚えにくいですよね?


そこで日本では、「キリが良い数字」ということで、「2万km」がATFの交換時期に設定され、ほとんどの業者がそれに追従することになったといわれています。

ATFの交換時期が「2万km」といわれるようになった背景には、このような事情があったのです。


ただし、エンジンオイルと同様に、ATFも「走行距離」だけではなく「期間」でも管理することが大切です。そのため、日本では「2万km毎または2年毎」のいずれか早いほうでのATF交換が推奨され、この交換サイクルが定着してきたのです。


ちなみに、ワンランク上の「Kendall VersaTrans LV ATF」ですが、日本では「4万km毎または2年毎」の交換サイクルを推奨しています。



ATFの交換は大切な予防整備。整備士と相談して実施しよう

かつてのATFとは違い、現在のATFは技術水準が向上し、車種によっては「無交換」を推奨するものも登場しています。

しかし、やはりATFもオイルですから、合成油・鉱物油にかかわらず、使えばもちろん汚れますし、使わなくても酸化劣化していきます。


そのため、補修部品マーケットに属する私たちとしては、前回も触れた通り「10万kmを超えたクルマにも、安全・安心・快適を提供しよう」をテーマに、「ATFは消耗品」と捉え、定期交換を推奨しています。

ATFの交換は、オートマが壊れる前の予防整備です。


なお、ATFの場合は「10万kmに達してから初めて交換する」といったことでは、逆に不調・故障を引き起こすリスクを高めることになります。

ATFの交換は、定期点検や車検などのタイミングで、整備士と相談のうえで実施するようにしましょう。

とくに、走行距離の多い中古車を購入した場合には、「ATFの交換履歴」や「適切なATFの交換時期」がわかりにくいと思いますので、きちんとプロに相談のうえで交換することが必要です。


 

関連する商品のご紹介


 

bottom of page