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化学合成油がすべてのクルマにベストではない理由

皆さんこんにちは!Kendallラボ担当のケン太です。いよいよゴールデンウィークですね。

気軽にドライブやツーリングに出かけられる状況にないので、今年はクルマやバイク関連の映画を見たり、本を読んだりして過ごしてみます。自宅にガレージでもあれば、ていねいに洗車をしたり、簡単なメンテナンスにチャレンジしたりするのですが。


さて、今回のKendallラボのテーマは「化学合成油がすべてのクルマにベストではない理由」です。

高品質・高性能といわれる化学合成油は、どんなクルマにとっても「ベストなエンジンオイル」ということになりそうですが、実はそうでもないのです。




化学合成油がその実力を発揮するクルマ・場面とは?


前回のKendallラボで触れた通り、高品質・高性能とされ、非常に高価な化学合成油は、文字通り「化学的に合成された油(ベースオイル)」です。化学合成油は「高熱に耐える」「摩擦抵抗を減らす」などの目的に合わせて、分子レベルでの複雑かつ高度な処理が施されているのですが、そのようなエンジンオイルが必要なのはどんなクルマ・場面なのでしょうか?


それは、極度にエンジン負荷がかかり、エンジンが過度な高温に晒される競技用車両(いわゆるレースカー)で使用する場合です。レースでは、1つでも上の順位を目指すために、コンマ1秒を削るために、エンジンの性能をフルに引き出すことが求められます。まさに“エンジン全開”で、速さを追求する競技用車両のエンジンにこそ、「高熱に耐える」「摩擦抵抗を減らす」などの目的に特化した化学合成油が必要になります。



化学合成油は「一般的な自家用車」には向いていない!?


一方で、「家族を駅や学校まで送るため」「毎日の通勤に使うため」「週末の買い物やドライブで」そういった使い方をされている、ごく一般的な自家用車に、非常に高価な化学合成油を入れる必要はありません。「高級車には高価な化学合成油が良い」というイメージが浸透していますが、それはまったくの誤解です。


むしろ、高級車を含む一般的な自家用車には、化学合成油よりも鉱物油・合成油(石油系炭化水素)タイプの良質なエンジンオイルを選ぶほうがコスパも良く、おススメです。その理由は、上記のような一般的なクルマの使い方(エンジンを停止している状態も含めて)の場合、「化学合成油はさほど長持ちしない」からです。


短期勝負で、かつ1~2戦でオイル交換を行う習慣があるレースの世界であれば、化学合成油は有利に働きます。しかし、一般的な自家用車のように、様々な使用環境・走行条件(酷暑、厳冬、渋滞、高速走行、チョイ乗りなど)のもと、少なくとも数千キロ・数ヶ月にわたってオイル交換をしないという場合、化学合成油は不向きです。


自動車メーカーが“純正エンジンオイル”を「PAO」や「エステル」といった化学合成油で作らない理由はそこにあります。もちろんコストの問題もありますが、一般的な自家用車の使用環境・走行条件では、「化学合成油はそれほど長持ちしない」ことを自動車メーカーは知っているのです。



えっ?化学合成油なのに長持ちしない!どうして?


たとえば、カー用品店などで「エンジンを守る!」「走りが変わる!」といった宣伝文句を使って販売されている、「PAO」を主原料とする化学合成系エンジンオイル。実際に使用してみたものの、「期待したほど長持ちしなかった」という話をよく耳にします。


その製品のベースオイルは、たしかにPAO。それは嘘ではありません。

しかし、同じPAOでもその品質は“ピンキリ”なのです。品質を左右するポイントは「PAOの分子量」です。

注意が必要なのは、PAOの分子に大・小のバラツキのあるブレンドタイプのもの。

とくに、低分子量を多く含んでいるものは熱安定性に乏しく、寿命が短くなる傾向があります。


一方、高分子量のPAOは熱安定性に優れており、長寿命が期待できます。しかし、需給関係の問題で、非常にニッチな工業用製品の原材料に回されており、「エンジンオイル向けに高分子量のPAOは回ってこない」という業界の裏事情もあります。

また、高分子量のPAOを使用したエンジンオイルができたとしても、とてつもなく高価なものになってしまうのです。

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