皆さんこんにちは!Kendallラボ担当・ケン太です。
日が落ちると、涼やかな虫の声が聞こえる季節になりましたね。
先日、とあるファーマーズマーケットまでドライブしたのですが、早くも栗や梨、ブドウなどがたくさん並んでいました。
“秋の味覚”が目当てのドライブ、ツーリングが楽しみですが、目的地で“密”にならないよう気を付けようと思います。
さて、今回のKendallラボは、『過走行車のATF交換で「走りを変える」ためのひと手間』というテーマでお届けします。
はじめに、「過走行車」とはどのようなクルマを指すのか、簡単に説明しておきましょう。
ハッキリとした定義はありませんが、中古車販売業界、自動車保険業界などでは、年間の平均走行距離数(年間1万km~1.5万km)よりも多く走っているクルマや、走行距離数が10万kmを超えているクルマを指す場合が多いようです。
エンジンオイルやオートマオイル(ATF)を交換すると、通常の場合、クルマの状態は間違いなく良くなります。しかし、運転するドライバー自身がその効果・変化をハッキリと体感できるかといえば、車種やクルマの状態にもよりますが、なかなか難しいところです。
しかし、走行距離数が10万kmを超えているような過走行車の場合、ATF交換時にあるひと手間(追加作業)を加えることで、クルマの“走り”が大きく変わることを体感できます。
ぜひ一度お試しいただきたい裏ワザです。
まずはオートマの中身とATFが汚れる理由を知ろう
過去のKendallラボ「オートマオイル(ATF)も定期交換が必要なの?」でお話しした通り、ATFはオートマッチック車のトランスミッション(動力伝達・変速装置)内部の「潤滑」や「冷却」などの重要な役割を果たしています。
しかしながら、ATFはエンジンオイルよりも長持ちするなどの理由で、定期的に交換されない場合が多く、「廃車するまで無交換」というクルマも多数存在しているハズです。
ATFはエンジンオイルよりも長持ちする・・・とはいっても、オートマチック車のトランスミッションそのものは、非常にデリケートなものです。
実際にトランスミッション内部をご覧になったことがある方は多くないと思いますが、まるでアリの巣のように細く、複雑に入り組んだATFの通り道(油路)があります。
細く、曲がりくねった油路をATFが循環することで、歯車などの部品を動かし、変速などの複雑な操作が行われているのです。
ATFは時間の経過とともに酸化するだけでなく、トランスミッション内部の部品が摩耗して発生する金属粉などが徐々に混ざり合うことで、少しずつ全体が劣化していきます。
劣化したATFを長期間使い続けると、ATオイルパンの内側やオイルの汚れを取り除くATFフィルターに汚れが蓄積します。
とくに、ATFフィルターに汚れが貼りついた場合では、オイルポンプから吸い上げられるATF量が減ることで、全体を循環するATF量も減り、油圧不良が起こるため「変速できない」「ミッションがスベる」といった不具合を引き起こします。油路が汚れで詰まってしまった場合も同様です。
たとえ不具合が起こらなくても、といった状態になることは珍しくありません。
走りを変える「ひと手間」は、オイルパンの掃除とフィルター交換
前置きが長くなって申し訳ありません!
それでは、「過走行」のAT車の走りを変える“裏ワザ”をご紹介しましょう。
一般的に、ATF交換といえば、エンジンオイルと同様に、オイルだけの交換を考える方がほとんどだと思います。
しかし、よく走り込んでいる過走行のクルマの場合では、ATF交換と同時に、ATFを貯めておくオイルパンの内側(磁石含む)をキレイに清掃し、ATFフィルター(ストレーナー)を新品へ交換しておくことが効果的です。
酸化したり、金属粉が混ざったりして劣化したATFだけを新しくしても、オイルパンやATFフィルターそのものの汚れを除去することはできないからです。
ある程度の距離を走行した(年数が経過した)クルマのオイルパンやATFフィルターには、金属粉や汚れが混ざった不溶解分が「ベットリ」とこびりついて、真っ黒(濃いグレー)になっています。
それらをキレイに掃除・交換することで、キレイなATFをより良い状態で循環させることができるようになります。
人間でいえば、体内に溜まった老廃物を体外に排出する、「デトックス効果」のようなものかもしれません。
その変化は、レーシングドライバーのように研ぎ澄まされた感覚を持つ人でなくても、十分に体感できるハズ。
とある取引先の方が、娘さんのクルマを車検に出した際、娘さんに黙ってオイルパンの清掃とATFフィルター交換をセットでATF交換したそうです。
後日、クルマが車検から戻ってくると、娘さんの第一声が「お父さん、私のクルマに何かした?」だったそうです。
過走行車に該当するAT車にお乗りの方で、「出足や加速が悪くなった気がする・・・」といった状態のときは、ATF交換と同時にATオイルパンの掃除とATFフィルターの交換をぜひお試しください。
とくに、ガレージからの出庫や信号待ちからの発進の際に「あれ?」「おおっ!」と思わず声が出るほどのスムーズ感を味わえると思います。
※過走行車の場合、使用状況やAT内部の状態によっては、ATFの交換作業そのものが困難な場合があります。ATF交換やオイルパンの清掃、ATフィルターの交換作業にあたっては、熟練の整備士さんに相談のうえで実施してください。
また、状態によっては、ATクーラーラインの洗浄も必要になる場合があります。